息子がオーディションを受けた話

3歳になったばかりで初めてオーディションというものを受けた。


基本目立ちたがりで、どこ行っても人見知りしない、緊張もしない、誰よりも前へ出るタイプだし、普段は結構周りを見てちゃんと動くから、親が過剰に期待していたのかもしれない。

実際は、ひどかった。

本人は照れたのかなんなのか、赤ちゃん語を喋り、赤ちゃんのふりなのか、おバカなふりなのか手をバタバタさせて「あばばばー」なんて感じだった。

普段は多少滑舌悪くたどたどしいときはあるものの、ちゃんと文章で喋っているのに。指示された言葉を、「あばばーうにゃむにゃ」と赤ちゃん語混じりで繰り返している。

私は違う部屋に待機していて聞こえてくる声だけだったから聞き耳をたてつつも「あーあ・・」というだけだった。

けれど、せっかく休みまで取って、その場にいた夫は酷く落胆し、態度に出さないようにしていたもののそんな息子に苛立っていた。


試験会場を後にして階段を下りるとき、「なんであんな声・・」「赤ちゃんのふりしちゃって全く」とついつい夫婦で愚痴ってしまっていた。

するとその空気だけ読んだのか、息子も来る時のハイテンションと違って「階段を自分で降りようとしたのに夫が手を繋いできた」というだけで「うぁーん」と泣き出してしまった。


たぶん、「自分が失敗をしでかして、それに親ががっかりしている」ということだけははっきりと感じて傷ついたのだろう。


その後も一貫してイヤイヤがひどかった。


親が勝手に期待して連れてきて、期待通りできなかった。だからまるで息子が悪いように、ついつい恨めしい目で見てしまって、傷つけてしまう・・完全に親のエゴだなと反省した。


本人がやりたいと言ったわけではないし、なにか本人にとってプラスになったのかわからない。むしろ居心地の悪い初めての場所に連れて行き「なにか失敗して親を失望させた」という恐怖を味あわせてしまった。


こういうことって親の強い意思がないと、息子のためではなく親の自己満足で無理にやらせているだけなんじゃないかという気がしてくるし、3歳なんてまだまだ赤ちゃんぽくしたい時期でもあるから仕方ないのだけれど。

こういう「親をがっかりさせた、自分が失敗した」という雰囲気だけ過敏に感じ取るくらい成長しているのに、息子を傷つけてしまったことに反省した。

息子にとっては両親の自分への評価が世界の全てだから。常に100点なんだよ、とはいかなくても、できるだけ楽しく幸せな日々を過ごして欲しいし、自信を持って成功体験を積み重ねていってほしいと思っている。

色々な経験をさせたいとは思うけど、全然準備もできていないまま連れ出して、過剰に期待してがっかりするのはもうやめよう。